悠木シュンの心が折れないブログ
こんにちは。第35回小説推理新人賞を受賞し、作家デビューした悠木シュンです。
パート①7つのポイント 、②新人賞のタブー、 ③物語の作り方、 ④リライトについて、 ⑤短編賞のメリットデメリット、 ⑥独白体について、 ⑦厳選5つのポイント、 ⑧質問&回答、 ⑨質問&回答、⑩質問&回答
まで講座を書きました。
今回は、落選してしまった作品のうまい利用法についてお話します。
【リライト】
皆さんは今、いくつくらい作品をお持ちでしょうか。
全力で書いたのに、うまくいかなかった作品ってありますよね。
途中で話が止まって未完成のままの作品。
一次通過すらしなかった作品。
アイディアはあるのにまだ具体的な形になっていない作品。
色々あると思いますが、それらは全てメモリースティックの中に保存しておいてください。
何度も新人賞にトライしたことのある人なら、リライトなんてよくやっているし今更やり方を聞かなくても、と思われるかもしれませんが、あえてここではご説明させていただきます。
私も、経験があるのでどういう使い方をされているのか想像がつきます。
リライトしてうまくいく場合とそうでない場合があるので覚えておいてください。
ここで一つご紹介したいのが、直木賞にノミネートされたこともある作家さんの話です。
とある新人賞の最終で落選した作品を別の新人賞に応募したところ、見事に受賞したという例があります。
おそらく、落選した作品をそっくりそのまま送ったのではないと思います。
何かしらの手直しを施されたはずです。
私がよくやっていたやり方は、高校生が主人公だったものを中学生に変えてみる。
男の主人公から女の主人公に変える。
これだけでも、だいぶ物語の中身が変わってきます。
しかし、結論から申しますと失敗です。
ダメだった作品をちょろっといじっただけではどうにもなりません。
最終まで残った作品であれば、多少の手直しで済むかもしれませんが、一次や二次通過程度の作品では同じ結果です。
では、どうすればいいのか? 使える箇所は、そう多くはありません。
キャラクターを切り取るか、シーンを切り取るか、セリフを切り取るか、この三つくらいです。
キャラクター
一度出来上がったキャラクターは、愛着もありますし、次に書くときにいい流れを作ってくれるので大事に取っておいてください。
あなたが物語を作る上で大事な劇団員になってくれるはずです。
気の強いキャラ、物知り博士みたいなキャラ、誰もが憧れるマドンナ的存在のキャラ。
キャラクターは何人いても困りません。
どんどんストックして、物語に合わせて登場させましょう。
キャラクターを一から作るのが苦手な人は、好きな俳優さんに置き換えて脳内でイメージするのも一つの手です。
自分を映画監督だと思ってキャスティングしてみると楽しいですよ。
シーン
感動の再会、せつない別れ、いろんなシーンがあると思いますが、作品が変わっても流用は可能です。
もう二度とこんないいシーンは書けないって思う瞬間ありますよね。
それを、落選した作品だからといって捨ててしまうのはもったいない。
そこだけ切り取ってストックしておいてください。
例えば、まだ誰も成功したことがない斬新な交渉シーンとか、フラッシュモブ以上にインパクトのある告白シーンとかいいですね。
そういうシーンは絶対に取っておいて損はありません。
いくらでも使いようがあります。
セリフ
名セリフって、急に降りてくる場合もあれば、実際に自分が言われて心に残っている言葉を書いたりしますよね。
このセリフはまだ世に出ていない。
どんな映画にもどんな小説にも出てきていないオリジナルなセリフって一つくらいありませんか?
それは、必ず別の作品でも生かせますので取っておいてください。
私の受賞作の中にとっておきのセリフがあるのでご紹介しておきます。
「オレには、人を動かす力があります」(『スマート泥棒』P26)
これは、生徒会選挙の演説で一人の男子が言ったものです。
この前後を読まないと、このセリフの意味は伝わらないかもしれませんが、とても印象深いシーンだと読んだ人には言われます。
一度でいいから使ってみたいセリフだとも言われます。
過去に落選した作品の中から抽出して、この物語にはめ込んだのです。
どうしても使いたかったので。(学生時代、実際にこのセリフを言って選挙に当選した人がいます)
上記の三つ以外に使えるものというと、自分が調べたことです。
偉人の言葉や、歴史、実際の事件など。
調べたことは、蘊蓄として物語の中で良い作用になる場合があるのでけっこう使えます。
物語は、切って貼って一枚の絵を完成させる感じです。
私もこのやり方で物語をパズルのように組み合わせて作ります。
最後にカチッとはまったときの快感といったらありません。
最後に一つ。
落選はしたけど、自分はおもしろいと思っている、絶対世に出したい作品ってありますよね。
私は、小説推理新人賞に二作品同時に応募しました。(この行為自体はあまりよくありません)
もう一方の作品は、一次通過すらしませんでしたが、三作品目の『花葬』で世に出ることができました。
つまり、私が言いたいことは、今あなたが書いている作品も過去の作品もいつかチャンスが巡ってくるので絶対に捨てないでほしいということです。
まとめ
さて、リライトの仕方についてお話しましたがいかがだったでしょうか?
ご質問やご感想などは、Twitterのほうで受け付けております。
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それでは、次回は短編の賞を狙うメリットとデメリットについてお送りしたいと思います。
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