悠木シュンの心が折れないブログ
こんにちは。
第35回小説推理新人賞を受賞し、作家デビューした悠木シュンです。
パート①7つのポイント 、②新人賞のタブー、 ③物語の作り方、 ④リライトについて、 ⑤短編賞のメリットデメリット、 ⑥独白体について、 ⑦厳選5つのポイント、 ⑧質問&回答、 ⑨質問&回答、⑩質問&回答
まで講座を書きました。
今回は、「独白体」についてお話します。
私の経験を元にご説明しますので、最後まで読んでいただけると、受賞への突破口が見つかるかもしれません。
さて、みなさんは独白体で小説を書いたことはありますか?
昔からある手法で、太宰治が「独白体」の名手だったと言われています。
実を言うと、「独白体」という言葉を知ったのは受賞したあとです。
作品を書いている頃は「語り口調の小説」というくらいの認識だったと思います。
その前に、独白体とは何かご存じない方のためにご説明させていただきます。
独白体
独白体とは、相手に話しかけるように物語を進める手法のことを言います。
「~ですか?」
「~ですよね」
「ええ、ぼくもそう思いましたよ」
などと、相手に質問を投げかけたり同調したりします。
私は、この独白体という手法を使い、新人賞を受賞しました。
なぜ、独白体にしたのか?
その理由は、単純に〝書きやすい〟からです。パート①からずっと読んでいただいた方ならご存知かと思いますが、私は、小説推理新人賞に二作同時に応募しました。
一つは、普通の小説のスタイルで、もう一つが独白体を使って。
(前者を作品Aとします。後者はスマドロです)
私は、作品Aを推していました。
とても重い内容の作品で、自分としては純文学風に書いているつもりでした。
(元々、芥川賞作家を目指していたので)。
これも重複しますが、小説推理新人賞は短編の賞です。応募規定が50枚~80枚。
(スマドロの一章が賞を取った独白体で書かれています)
がんばれば、一週間ほどでもう一作書けそうですよね?
そこで私は、全くタイプの違う作品を二つ同時に送って、書き手としての振り幅があることをアピールしようと考えました。
作品Aを引き立たせるために、スマドロを書いたのです。
しかし、どういうわけか受賞したのは引き立たせ役だったスマドロの方でした。
勘違いしてほしくないのですが、私は二作品同時に応募してみろと言っているわけではありません。
これは後で聞いた話ですが、二作品以上送ってくる人は、自分の作品に自信がない、一つに絞れない優柔不断な人、と思われてしまうそうです。
私の作戦はうまくいきませんでしたが、運よく拾っていただいたのでラッキーという感じでした。
このラッキーが引き起こす苦悩については、パート⑤で語っていますので興味があったら読んでみてください。
ここからは、独白体のメリットについてお話します。
さきほど言ったように、〝書きやすい〟ということが最大のメリットです。
地の文が苦手、情景描写が苦手、という人はけっこういると思います。
景色や状況を伝えたいのに、的確な表現が浮かばずついつい説明くさくなってしまってしまいがちです。
単に、どういう言葉で場面と場面をつないだらいいかわからないという悩みもあるかと思います。
季節の変わり目を表す一説なんか、とくに悩みますよね。
そういう人は、地の文が極端に少なくなり、既定の枚数に届かなくて途中で投げ出してしまったり、セリフだらけになったり、どうでもいいシーンを書き足してなんとかごまかそうとしているはずです。
ごまかした作品は、言うまでもなく落選します。
そんな情景描写が苦手な方にこそ、独白体をおすすめします。
ただ、誰かに話しかけるように物語を書けばいいんです。
でも、どうやっていいかわからないし……。
という人は、お笑い番組をたくさん見て勉強してください。
綾小路きみまろさんの漫談は、つかみからオチまでの構成がとても素晴らしいですね。
あと、落語が好きな方はそれも参考になると思います。
すべらない話なんかもいいですね。
芸人さんのエピソードトークは、起承転結がはっきりしていてとても勉強になります。
情景描写がいらない分、必要になってくるのはセンスです。
言葉の選び方や、題材やキャラクターがポイントになってきます。
センスのあるなしは、まず書いてみてご自身で判断してみてください。
普通の小説を書くより楽しいか?筆が進むか?
それだけでも十分、向き不向きがわかると思います。
また、語り口調はどうも苦手という方は、単純に語尾を「です。ます。」調にするだけでもいいです。
ナレーション風に進めるのもいいですし、手紙のように書くのもいいですし、インタビュー形式で書くのもいいですね。
今、思いついたんですけどユーチューバーが主人公の小説なんてどうでしょう?
彼らの語り口調はとても親近感があるし、真似しやすいのではないでしょうか。
物語も無限に広がると思います。
自分のスタイルを見つけやすいのが「独白体」です。
しかし、良いことばかりではありません。
独白体は、書きやすいし読みやすいのですが、好き嫌いが分かれる手法ではあります。
普通の小説が好き、という人にはどうしても敬遠されてしまいますので、プロになってからずっと独白体で書くというのはおすすめしません。
私も、二冊目までは独白体で書いていましたが、止めてしまいました。
まあ、爆発的に売れてたら話は別ですが、それを貫いて太宰治のようになろうとは思いませんでした。
受賞作の選評で、「この作品は、書きなれたベテラン作家の短編集の中の一作のようだ」と言われました。
おそらく、私が今後独白体で物語を書くときは、短編集のお話が来たときだと思っています。
このブログは、新人賞を取ってデビューするための講座ではありますが、どうすれば売れる作家になれるのか、ということも一緒に書いていきますので、今後も読んでいただけると幸いです。
まとめ
さて、「独白体」についてお話しましたがいかがだったでしょうか?
ご質問やご感想などは、Twitterのほうで受け付けております。
次回の内容は、まだ決めておりませんので「こういうこと教えて、知りたい」などありましたら遠慮せずにDМを送ってきてください。
お待ちしております。
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